桜庭一樹『荒野の恋』第一部、第二部

荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)

荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

 第二部が面陳されていたので、まとめて読んでみた。眼鏡っ娘萌え、かなあ。個人的には、なつかしいジュブナイルのような気がする。青年は荒野をめざす、だし。簡単に言うと、少女が家にいて(黒猫と形容される)、そこに複数の人物が出入りすると、その分だけ女になったり、人間関係を取り結ぶ術を覚えたり、家族共同体の構成員としてオイコスの運営に(微力ながらも)参加するようになったり、と、まあ、成長するわけですね、という話。少女が家にとどまりながら変わってゆくのに比べ、少年は荒野から帰ってきてしまいます。さて、その後は第三部ってところで、どれくらいそしてどのように少年が変化しているのか、気になるところ。

テヅカ・イズ・デッドを読んでみた

テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ

テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ

 内容の把握に困難を覚えたが、こちらの読解力不足に起因するのだろう。内容は多岐にわたるが、ここでは1点だけ。
 第4章における理論的整備、すなわちフレームの不確定性*1によるマンガにおける近代的リアリズム*2の把握はおもしろい。極端に単純化、図式化すると以下の通りと思われる。

  1. 少・青年マンガの「単線的」リアリズム。フレームは確定的で、マンガのコマはカメラアイに類似。すなわち映画的。
  2. 少女マンガの「複線的」リアリズム。フレームは不確定的で、マンガのコマはカメラアイから離れる。すなわち文学的。

 これに対して、どうやら第4章の末尾から第5章にかけて徐々に提示されているのが、第三のリアリズム、キャラのリアリティによるリアリズムのようだ。「身体を欠いたまま感情だけを純粋に媒介/生成するもの」としての「マンガのおばけ」あるいはキャラによるそれは、「文字/言葉が媒介/生成する」近代的主体によるそれとは異なっている。
 伊藤はさらに前者を大塚英志の指摘した「まんが・アニメ的リアリズム」と関連づけているのだが、そうすると、大塚の自然主義リアリズム対マンガ・アニメ的リアリズムという構図を踏襲して議論しているのかどうか、いまいち読解に自信がない。この点は第3章で検討されているキャラ/キャラクターとも繋がってくるが、前者がまんが・アニメ的キャラで後者が文学的な近代的主体という図式化でいいのかしら。

*1:マンガにおけるコマのあり方が一様ではなく、それによって時空間の分節化のなされ方が異なってゆくこと。また同時にコマの枠線が物質性を帯びることを指すこともある。

*2:ここでいうリアリズムはリアリティーを保持する方法というような意味合いで用いられているようだ。ちなみに伊藤はリアリティーを作中のものごとを実際にありそうなことと感じさせる「もっともらしさ」と、作品世界そのものを存在するかのように感じさせる「現前性」の二つに分け、本書では特に後者を検討しているという。

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作者:篠田浩一郎
出版社:筑摩書房
発売日:1984/9
メディア:単行本