離人症の光学
- 作者: 丹生谷貴志
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1999/04
- メディア: 単行本
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収められている七つ目の文章が「離人症の光学」です。探偵小説の主人公あるいは作者は、生の実感を伴う世界と直接の接触を持たない空虚さとともに、傍観者としての全知の能力を手に入れると、丹生谷は指摘しています。ここから話は高村薫と石原慎太郎の対談、阪神大震災、島尾伸三、三島由紀夫を経て町田康と車谷長吉に行き着くのですが、そうした流れの奔放な印象とは違って、丹生谷はこの文章で執拗に離人症的なあり方を追跡しています。探偵小説の形式的問題について貴重な論点であるばかりでなく、それらといわゆる純文学との差異を鮮やかに切り出してもいると、私は思うのです。自信はないけど。メタリアル・フィクションと微妙に関係がありそうとも感じています。自信はないけど。だから読んでみて下さい。あと、冒頭のインタビューもすごいです。