西島大介『土曜日の実験室 詩と批評とあと何か』

土曜日の実験室―詩と批評とあと何か (Infas books)

土曜日の実験室―詩と批評とあと何か (Infas books)

 第1部のエヴァを指し示している幾つかの部分は、どういった意味合いなんだろう。大塚英志『定本物語消費論』の表紙(下記)の奇妙な廃墟とを重ね合わせることで、「神戸」「オウム」「エヴァ」という90年代の持続あるいは閉塞を見て取るとよいのでしょうか。と思ったら、第2部のインタビュー「いやほんと、どうでもいいんです実際 『物語る絵画』について」で作者が、エヴァ以降は何もないと答えてた。
 「人間の実存がかなり危ういという実感があるのでしょうか」って質問に対して作者は「実存自体の否定というか。どうでもいいみたいな。」と応じている。詳細は読んでほしいというか、読め! という感じですが、重要なのは劣化コピーに満ちた現状を実存の不在として流すだけではすまなくて、それにすら魂は宿るかも知れない、そこに切実さを求める人間が居るという認識だと作者は言っている(ようです、わたしの読んだ限り)。

定本 物語消費論 (角川文庫)